雨のち晴れ

子育て・考えたことやたわいのない日常を綴った日記です

子供の騒音問題で悩んだ時期①~VS階下のおじさん

独身時代、1人暮しをしていたアパートは駅にも近く、2LDKと広かったので、そのまま結婚後も住み続けていた。大人だけならば、静かに暮らせていたのだが、子供が2人目、3人目となると、相当うるさかったのだろう、大家さんから苦情を言われるようになってしまった。

 

それまでも、子供が泣きだしたら窓を閉めたり、防音効果のあるカーペットを敷くなど、気を使っているつもりだったのだが、アパートには子育て世帯が多く、お互い様だと大目にみるような雰囲気があった。油断していたのは確かだった。

 

私は、配慮がなかった事を反省し、隣と階下の方にお詫びを言いに行った。どうやら苦情を言ったのは階下の一人暮らしのおじさんらしかったが、おじさんはそれでも“子供のことだから仕方ない”と、理解を示してくれたので、ひとまずホッとして、出来るだけ気をつけて生活するようにした。

だが、暫くすると、また大家さんが

「集合住宅なんだから、もっと気を使って貰わないと~」

と言ってきた。困った。2才、3才位の子供ってコントロールがきかない。泣くなと言うほうが無理だし、走るなと言っても走る。しかも、筋力のない子供の足音は、ペタペタと、とてもよく響くのだ。

 

考えられる騒音対策はすでにしてあったので、私に出来ることは、もう出来るだけ家にいないようにする事しかなかった。

 

それからは、朝起きるとおじさんが出勤しているかどうか玄関を出て、駐車場の車を確認するのが日課になった。おじさんが休みの日はお散歩や公園、児童館などに行き、なるべく、家にいないようにした。

 

でも限界がある。小さな子供を3人連れて1日中、外にいるのは無理だ。かなり頑張って大荷物で出掛けても、夕方には帰ってきてご飯を食べさせたり、風呂に入れたりしなければならない。1人が熱を出せば、外出できない。

 

そのうち、ドンドンと床から音がするようになり、私は縮み上がった。多分、何かで天井をたたいていたのだろう。 にもかかわらず、おじさんに顔を会わせた際、

「昨日は騒がしくてすみませんでした。」

と謝ると、

「男の子だもんな、元気で何よりだよ。」

などと返してくる。キョトーンだ。では、何だったのだろう?あの音は…

 

おじさんは段々と過激化してきた。ドンドンの他に、「うるせー!」という怒鳴り声まで聞こえてくるようになった。

 噂では、おじさんは休みの日には、昼間から酒を飲んでいるようだ。あの豹変ぶりは、お酒のせいもあるのだろう。

 

しまいにおじさんは、階段を上がって来て「出てこいよ!うっせーって言ってんだよ!」と、うちの玄関のドアを叩いたり、蹴ったりするようになり、私は恐怖でドアを開けて対応することはおろか、改めて謝罪する事もできなくなってしまった。

 

私はすっかりおじさん恐怖症になってしまい、おじさんの動向を必要以上に気にするようになった。

こちらもおじさんの生活音に耳をすますようなる。雨戸を乱暴に開ける音、部屋の中を移動する足音、洗濯機を回す音、出かける際のドアを閉める音。床に耳をつけ、耳をすます。おじさんがリビングでテレビを見ているならば、子供達をダイニングで遊ばせた。

当時はおじさんの休日と出勤時間と帰宅時間を記録し、シフトを予測して表にしていた。今思うと、病的というか、異常というか…でも私も必死だったのだ。

 

 あの頃の事を思い出すと自分でも辛くなってくる。多分、鬼の形相で子育てをしていたのだと思う。一番可愛いさかりなのに、子育てを楽しむ余裕はなく、おじさんの事もあり、子育てが辛くて仕方なかった。子供達には、特に長男にはかわいそうな事をしてしまった。

 

長男は育てにくい子だった。我が強いというか、こだわりが強いというか、聞き分けが悪く、思い通りにならないといつまでもジャンプしながら泣き続ける。ジャンピング・ギャーギャー。また、声がデカくて、泣き声が大音量なのにも参ってしまう。

 

あの夕方のことは、いまでも私の中で引っかかっている。一日子供達を連れ出して帰って来て、私の疲れも、マックスだった。

原因は忘れたが、長男が愚図り始めた。今日はおじさんがいる日、頼むから泣かないでくれという気持ちで、注意を違う方へ向けようとしたのだが、ダメだった。

 

いつものジャンピングギャーギャーが始まってしまった。案の定、下からドンドン。

 

でも、ジャンピングギャーギャーのスイッチが入ってしまったら、もう何をしても無理なのだ。泣いている長男自身、どうにもならないのだろう。それは分かっているのだが、私も追い詰められていた。

「ほら、聞こえるでしょ、下のおじさんがうるさいって言ってるよ!」

「頼むから黙って!黙れったら黙れよ!」

小さい長男に怒鳴りつけた。

「おまえの泣く声がうるさいんだよ!」

こっちだって泣きたいんだよ。どうすりゃいいんだよ。私も泣きながら、ポカポカ長男の頭をぶった。八つ当たりだ。もう虐待だ。

 

私が怒鳴れば怒鳴る程、長男はギャーギャー叫び、おじさんはドンドン天井を叩いた。私の怒鳴り声と長男の鳴き声とおじさんのドンドンと長男のジャンプとおじさんの罵声。まさに地獄絵図。

 

2年位前に、あの日の事を長男に謝る事にした。あの時、私が精神的に追い詰められた状況を説明して、いくら親だからって小さい子供に酷いことを言ったりぶったりするのはやってはいけないことだという事も説明した。

 

長男はよく憶えていた。心の傷が癒えたかどうかは分からないが、恥ずかしそうに許してくれた。

しばらくして、長男が言った。

 

「ママが虐待した時の為にこれ机の前に貼っておくから。へへっ!」

貼った紙は学校で配られたという『24時間こどもSOSダイアル』だった。

悶絶。

でも、あの紙を見る度に、親として姿勢を正さねばとも思うようになった。

なかなか良いアイデアだ。

 

 

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