今まで人に話したいけど、どうも話せない話というのがある。
その一つが、私は、なーんと母のお腹の中にいる時から3才位までの記憶を結構鮮明に憶えているという話だ。ただ、自分としては確かな記憶なのだけど、単なる思い込みだと思われるかもしれないし、“赤ちゃん・幼児あるある”的な、たわいのない記憶にすきない。だから、なんとなく話せない。
でも、ブログにはこっそりと書いちゃうという矛盾をお許しください。
まず、母のお腹から出る直前に、「出たくないなあ。いつまでもここにいたい。あ~出なきゃいけないのか~。」と思っていた。これは、言葉で思っていた訳ではなく、そういう感情だったと思ってほしい。冬の朝、目覚めても、暖かな布団から出たくない、そういう感じだ。
実際、私は出産予定日を過ぎてもなかなか産まれなかった。
大阪万博に行ったのも覚えている。1歳になるかならないか、ということになる。あまりに太陽の搭が強烈な印象だったので憶えている。
ただ、私は酷く不機嫌だった。ムシムシと暑く、とても不快だったので、大泣きした。こんなに不快だと泣いて訴えているのに、周りの大人は、真剣に耳を傾けてくれない。
「はい、はい。どーちたの。はい、はい。」
という感じであやすだけ。バカにしてんの?人の話まじめに聞いてよ!オギャー!オギャー!あやしたって無駄だ。もっと泣いてやる。オギャー!オギャー!アレ?なんで泣いてるのか忘れちゃった、私って、バカで嫌になる。オギャー!なんで泣いてるのかわからなくなっちゃった。オギャー!
という、感情で泣いていた。
その他、これは近所のスーパーマーケットが改築する前だと考えると、2才位だったと思う。よく、そのスーパーに母に連れられて行ったのだが、その日は自分の中で勝手に魚肉ソーセージを買ってもらうと決めていた。私はかなり粘ったが、とうとう買ってくれなかった母に対し、強烈な恨みを抱いた。『ママなんか大嫌いだ。もうこんなヤツはママとは思わない!もう絶対に口をきかない!』と決め込み、ふてくされて帰った。でも、2歳児がそれを実行出来るはずもなく、すぐに母に甘えて頼ってしまった。あ、絶交したはずなのにしまった!そんな自分をなんてバカなんだろうと思ったのだ。
こうして振り返ると、2才位までは、伝えれないストレス、未熟が故の出来なさ加減に、自分に嫌気がさすストレスが強かったように思う。
3才の時の祖母の葬式もよく憶えている。
私は祖母が大好きだった。近所の幼児達と戯れるのはあまり好きではなかった。どんだけ上から目線なのかと思うのだが、自分も子供のクセに、“子供って、わがままで、気分屋さんで、ヤダ”と思っていた。当時の私にとって、知性あふれる祖母に遊んでもらう時間ほど楽しくて充実した時間はなかった。
しかし、死というものを理解できない私にとって、祖母の葬式は楽しいイベントでしかなかった。
いとこと大人のような数珠が持ちたくて、なんのプランもなく折り紙で作ろうとしたが、失敗した。
葬式で忙しい親に代わり、父の後輩のAさんに散歩に連れて行って貰った。ハルジオンがたくさん咲いてる空き地で遊んでいたら、バラバラになったエロ本が散乱していた。
「これ、なーに?これ、なーに?」
といとこや私にツッコまれ、Aさんが凄く困っていたのも憶えている。
「おばあちゃまは亡くなったのよ。さようならを言いましょう。」
と言われても、ピンと来ないで
「ハイ。おばあちゃま、さようなら。また一緒に遊びましょ。」
と棺桶で眠る祖母の顔の横にお花を置いた。
祖母の死が大したこととは思っていなかった。
人に話した事がないと言ったが、実は親に話して、私の記憶の検証を試みた事がある。母が言うには、『多分、そんな事もあったが、それは後のち写真で見たり、大人の話しを聞いていたのを自分の記憶だと思い込んでるんじゃないの。』とのこと。まあ、私もそう言われれば、そうなのかもしれないとも思う。だから、自信を持って話せないのだ。
でも、この思い込みかもしれない記憶は、子育てをするうえで役にたった。泣かれたり、愚図られたりでイラっときた時、『私もこれ、やってたわ~。仕方ないか。』と、冷静になれたりするからだ。
赤ちゃんや幼児って、上手くしゃべれないからといって、何も考えてないわけじゃない。いろんな事を考えているし、感情豊かだ。それを言葉で伝えられないだけ。ということを実体験として理解できた。一生懸命に何かを感じたり、考えたり、泣いて訴えたりしている。小さいから、出来ないから、といってナメてはいけないのだ。そう思った。
人は生まれ変わるもので、生まれ変わる前の記憶を持つ人がいる、という話もあるが、残念な事に、私は生まれ変わる前の事までは分からない。
また、子供は親を選んで生まれてくるという話もあるが、親を選んだ記憶もない。
ちなみに、3人の息子達にも聞いてみたが、生まれ変わる前はおろか、お腹の中にいる時の記憶もなかった。あぁ、つまらない。
何か憶えてたら面白いのになあ。
まあ、そんなモンだよな…。